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父の笑顔

2006–04–15 (Sat) 23:59
翌日曜日に祖父の3回忌の法要が控えているため
実家にもどりました。
本日泊まって、
翌日家族とともに新幹線で大阪へ。
日帰りの強行軍の予定となっていました。

さて、実家に帰ったところ、
母がなかば自慢げな含み笑顔をたたえて
「祐介、これ見てごらん」と
日経新聞のとあるページを私に差し出しました。
自分では読売新聞などを取っているため
日経新聞には記事の内容的にもあまり興味を引くものがなく。
何を嬉しそうに…と思いながら、
その記事を手にとって見ることにしました。
「うえの記事じゃないわよ。下の広告」
と母が注釈を入れる前に、私は確かにその大きな広告のほうに
目を移していました。
そして、私の目はまたたく間にある一点にとまったのです。
その広告は、某有名商社の広告でした。
読売新聞などでは見かけない、商社系企業の広告です。
内容は、″わが社はCATV分野での事業展開を推し進めていますよ″
というような感じのPR広告でした。
2世帯家族の6人が嬉しそうに
こちらに向って(つまりこちら側がテレビ視点)
テレビリモコンを突き出している図式でした。
私が目を留めたのはその、6人家族の両端。
テレビのブラウン管からみたような絵になっており
(という構図がデジタル放送を意識している分野のはずなのに
まるで古めかしいのですが)
両端にいる人の顔は若干間延びしてしまいます。
ゆえに一瞬見たときはきづかなかったのですが、
まじまじと見てみれば見てみるほど、
それは間違いなく私の父と母の姿だとしか思えないのでした。

「なにしたん」
まるで犯罪者でも扱うがごとき問いをこぼした不肖な息子を気に留めることなく、
母は満面の笑顔でことの経緯を教えてくれたのでした。

私の父は、某有名企業で働いた商社マンです。
しかし、生来の曲がったことが嫌いな気骨が災いしてか
若いうちから出世街道から離れたところに
身を置いていたと聞いています。
上司に手柄を横取りされることもあったと聞きます。
それでも事業の最先端に常に配属されては
そのたびに実績を残してきたとも聞きます。
父を慕う部下も多かったと聞きます。
ありきたりな例えで表すならば
私は”島耕作”に育てられた息子です。
島耕作は会社内人事の逆転劇で
みごと取締役にまで上り詰めましたが
父はついにそれは適いませんでした。
定年退職を残り数年に控え、
会社の取締役会に入れないことが見えてきたところで
父は静かに会社を去ることにしたようです。
今は系列会社の出向社長として、
退職までの日々を過ごしています。

出世の道が絶たれたここ数年の父は、
なかばうつ病のような落ち込みようでした。
そんなときに父の父親、つまり私の祖父が亡くなりました。
祖母も骨折と風邪をこじらせての入院が災いし
今は寝たきりの状態です。
一時に起こった老境に至る前の苦しみに、
父が静かに喘ぐ姿を私はすぐ傍では観ていません。
しかし、うちに帰るたびに衰える父の姿は
たまにしか会えない立場であるだけに、はっきりとわかるのです。
かつては、覇気の塊のような父でした。
私が最後まで乗り越えるのを挫折し続けた
大きな父でした。

私は、かつて大学卒業を控えた数年前の一年間
父と長い間、喧嘩をしたことがあります。
大学をでても就職せずに、文筆家の道を志すと
現実から目を背けるような私の進路に
父は最後まで反対し続け、私に詰問し続けました。
結局、大学卒業とともに家を出て、独り立ちすることで
その進路に、己の人生に責任を取るという結論で
父は私との喧嘩に終止符を打ったのでした。

家を出る前に、父が話してくれました。
実は父も、大学最後の一年間、
就職するかどうかを死ぬほど悩んだそうです。
実は父も、私のように文筆を志したことがあったこと
それを聞かされたのもそのときでした。
父はよく私を見ています。
今では家に帰るたびに、父は私にたくさんの本を貸してくれます。
そしてこう言い付けるのです。
「文筆を志す身なら、まずは浴びるように読め。
お前は全然読書量が足りない。
あの頃の俺と比べても、お前は全然話しにならない」

父もまた、祖父の生きてきた人生に抗い、
他の道を模索したのかもしれません。
しかし結局、父は祖父と業界は違えど、
同じ会社人の道を選びました。
祖父は偉大な会社人でした。
そして父もまた、父の生き方で、
尊敬すべき会社人として生きて来ました。

実はこの某商社のCMに出るきっかけを作ったのが
父の直属の部下だった人でした。
写真ではちょうど、父と母の息子の嫁みたいな位置に
座っている女性でした。
年のころは、私よりも2歳ほど年上なだけ。
父を慕う気持ちがどのようなものかは
社会人経験のない私には察しもつかないことです。
ですが、見上げる視線の高さはわかります。

この元部下の人が父に急遽CM出演の依頼をした経緯を
母は笑いながら話してくれましたが
私はどうも、そこに作為を感じてしまうのです。
この部下の人は、はじめから父にオファーを出すしかけを
最初から練っていたのではないかな、と。
うちの父にストレートにそんなことを頼んでも
父が快く承諾するわけがない。
ある意味素直な人ではないですから。
だから、一計を案じたのではないかと私は考えたのでした。
小学生くらいの年頃の坊やと幼児の女の子の子役二人は
さすがにプロの子役らしいのですが、
祖父祖母役にまでプロを使わねばならない理由など
あるとも思えなかったからです。
父母役に元部下の方を含めた社員を使うならば
別に祖父祖母にお金を出す理由もないでしょう。

広告に映る父と母をひとしきり眺めながら
私は母に言いました。
「なんかママン、疲れてるねえ」
「だって、祐介、この撮影に4時間もかかったのよ?」
「一方で親父、なんでこんなに笑ってんだろうね。
この中でひとり、大笑いしてるよ」
「そうなのよ。元部下のお二人はひきつってるのにねえ」
それから母は、その4時間の撮影でひたすらいじられた
父の話をしてくれました。
リモコンを持つ右手の逆、左手にはコーヒーカップが握られてますが
それに落ち着くまでにいろいろと試行錯誤が繰り返されたそうなのです。
猫を抱かせてみたり、子役をひざに抱かせてみたり……
話の上では、父だけがいじられ役だったようです。
父はそれをすっかり楽しんでいたと、
母はそう説明してくれたのでした。

残念ながら、父母に止められていますので
その写真の掲載は控えます(笑)
しかし、広告の上の父の笑顔の
吹っ切れていること、気持ちよいこと。
ひとりだけ快活に笑う父の姿を見ながら、
父が会社人として残してきた功績を
はじめて目の当たりにできた悦びを
ひとりかみ締めたのでありました。

ちょうど帰宅した父に、
私は広告の感想を言って見ました。
「なんか役者だねえ、ひとりだけハイテンションだ」
生意気な物言いで述べる息子の感想を受け止めた父は
久しぶりに一点の曇りもない、晴れやかな笑顔を浮かべたのでした。
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コメント

MIXITopのバトンの質問てなにさ
あと もっと早く更新しろ!

> 通りすがりさん

そろそろ来る頃だと思った。
こんなはずではと思いながら
コツコツ書くことにするわ('A`)

30代,40代の転職・ウェブマスター

ウェブマスターは、ホームページの編集長 http://mannequin.rcrane4law.com/

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