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世界の喪失

2006–03–27 (Mon) 23:59
その日私は、木曜の春野忍軍定例会に備えて
ジャコウ採りに勤しんでいた。
最近、新しい環境に放り込まれて
不器用にも丁寧に適応しようと勤めていたリアルの生活に尾を引かれ
春姫の2nd薬師に渡すジャコウ献上が滞っていたので
ひさびさにその作業をしていたのである。

誤解を呼ばないように補足しておくと、
りき丸やくりちゃんのキャラクターは、
すべからく春姫の作る丹に頼ってきた。
なにしろ、春姫の薬師である空ちゃんが丹を精製できるようになってから
りき丸は丹を買ったことがないのだ。
その代わり、我々は春姫が作る丹の材料として
私がジャコウを、そしてくりちゃんがれい羊角を、
という按配で、一番高価な材料を採集し、
献上するようにしていた。
春姫に求められたのではなく、
我々が自ら率先してやっているところに
春姫の人徳が伺えるであろう。わっはっは!

と、結果としては
春姫を擁護しているというより
りき丸の浅ましさをむき出しにしたような
意味不明の説明になってしまったが、
それはさておき。
今週の献上ぶんを掘り終えた私は、
信書が届いていることに気付き、それを開いてみた。

それは、まさしく晴天の霹靂だった。それは春姫、無期限休養の報せであったのだ。

その場で崩れ落ちそうになった私に
くりちゃんや知人から次々と対話が入った。
みんなはどうやら、春姫に会えたようだ。
そして、何よりもその報せを話題に
私のもとに声をかけてくる知人が多いのだ。
時間がたつうちに、
春姫はどうやら自分がお世話になったすべての人に
挨拶を送ったらしいということがはっきりした。

ともあれ、春姫の喪失は
私にとって世界の喪失に等しい。
大げさなと笑われるかもしれないが、
私のような不器用な人間が、この世界で1年半も忍耐強く
牛歩の歩みではあったがキャラクタの成長を促し続けられたのも
すべては春姫とともに進んでこれたからだった。

毎日、春姫こと海ちゃんと過ごす
午前中の穏やかなひと時が好きだった。
ただそれだけのために、この世界にとどまり続けたことだってある。
私を戦国ネバーランドに招待した友人は
他の世界に去っていき、
この世界で出逢ったはじめての知人も
私のちいさな過ちのおかげで世界を去った。
もはやとどまる理由など、あの頃の私にはなかった。

大航海時代オンラインへの移住をひそかに固めながら
(そもそもそれまでのつなぎという予定で
この信長ONLINEをやっていたのだから。)
私はしばらくClosed β版の世界に引きこもっていた。
そしてひと月ほどたったある日、私は再び信長に戻ったのだが
春姫は私の帰還を泣き崩れんばかりの勢いで歓迎してくれた。
当時は、無論のこと信書システムなどない。
私がいなくなる理由も告げていなければ
私が帰ってくる時期だって告げていなかった。
勝手に去った知人をここまで待ってくれる人間など
いるはずはなかった。

春姫は非常にナイーブで、人見知りする。
当時は春姫とりき丸ともうひとりの知人の3人で
この世界で行うにもあまりにちいさな遊びを繰り返していた。
しかし私たちがこの世界に描く空想の絵巻物は
ひたすら修得に明け暮れるその頃の自分たちを考えると
はるかに瑞々しいひと時を描いたものであったことだけは
間違いなかった。

春姫がはじめてであった最初の知人が
私の過失をもとに去って、
そのうえ私まで去ってしまえば、
残された春姫はこの世界でひとりなのだ。
おおげさに言えばそういうことなのだと、
何故かそのとき痛切に感じた。

私はそれ以来、春姫とともに育ち、
この世界でやれることを一つ一つ増やしていった。
基礎目録を皆伝し、30代の徒党にまぎれにくくなった冬の時代は、
春姫とともにコツコツ狩りをして過ごした。
春姫の収集癖が旺盛になったのもその頃だった気がする。
春姫が薬師を作った時は、
いつか先輩の黄さんの隣で丹やお守りを売ってやるんだという
彼女を支援するため、採集物を分けてあげるようになった。
思えばその頃から、相互補助の関係がはじまり、
我々の集める材料はほとんど共有物のように動くようになっていた。
必要な材料はすべて週一回の集会のときまで各々の倉庫に備蓄され
集会のある朝に動いた。
実はこの定例集会の日取りも、私の予定をもとに組まれている。
春姫が、私に合わせて動いてくれるから
集会日もおのずとその日に動くのだ。
思えば、春姫親衛隊の面々もすべて
春姫から繋がった関係だった。
今では私とマブダチのように趣味の話に興じるくりちゃんも、
春姫を通じて遊ぶようになったひとりなのだ。

気がつけば、私にとっての春姫は
これ以上ないほど大きな存在になっていた。
私にとって春姫は、
この世界で失ってはならない
たった一つの宝物になっていた。

それは、あえて例えるならば世界の喪失に匹敵することだった。

当時私がログインを避けた一時期、
春姫がそういう喪失感を味わったかどうかは、さだかではない。
しかし、私は1年半の春姫と過ごした時間の中で
春姫がいなくなるということを、
まったく想像できなくなっていたのは確かだ。

あの時、春姫は待っていた。
だから私も、できる限りの範囲で、春姫を待つことにした。
おそらくどこかで、私はこの世界から遠ざかる日が来る。
それは近くない未来にあることも確かだ。
しかし、彼女が帰ってくるまでは
私も待ち続けたいと思う。

ジャコウ、こつこつ貯め続けておくね。
サーバーの保存期間が過ぎて消えることになっても
君のアカウントに向けて、たまには手紙を書くね。

私は、この世界にいますこし、とどまり続けることにしたよ。
君が帰る日を、首を長くして待ってます。
君が帰ってきたときに、僕が半べそかきながら飛びついていく日を
心待ちにしています。
蛍と童心

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Author:賀沢祐介
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