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カフス・ボタンと負の想念

2006–02–08 (Wed) 23:59
また寝坊しました。
否、寝付けませんでした。
8時に飛び起き、急いで身支度、
朝食をかきこんで飛び出します。

裏目に出ました。
最寄り駅を目前にして、
まずは定期入れを忘れたことに気付きます。
致し方ない、今日は自腹で行こう。
そう思ったとき、入店証も定期入れにあることを思い出し、
朝から猛ダッシュで家に戻ります。
昨日は寒かったので、ロングコートを着ていたのですが、
どうやらその中に収めっぱなしだったようです。
ダッシュして家を出ましたが、
かきこんだばかりの朝食が胃の中で踊りまくり
走れません。
体を引きずるようにして、私は駅に向かいます。
走れメロスの気分です。
計算どおり、平日の朝は20分で東京に出られるはずが
30分かかってくれます。
日曜の出勤時と比べると、10分のロス。
到着はギリギリ時間内でしたが、
規定時間は5分オーバー。初の遅刻です。
しかし、遅刻など気にしている暇はありません。
今日は私がレジを開けるのですから。
地下5階の出納から階段を駆け上り
急ぎ足でレジへ。
開店5分前の音楽が鳴り始めます。
幸いしたのは、
私がレジ開設手順を完璧に把握していたことだけでした。
無事、開店に間に合いました。
開店前、この寒さの中で、じっとりと汗をにじませる私。
何やってんだか。

さしもの化粧品でも、
平日の朝から飛ぶように売れることはありません。
なかなか退屈な業務が続く中、
売場の奥にある小部屋にぽつりと座る私はひたすら、
居場所をなくしたのら犬のような心境でした。
今までは常に、同僚が傍にいてくれたけれど、
これからは常に、この種の孤独が私の同僚になるのだな。
そう思うと、普段なら気が楽になる私なのですが
私は非常に所在無さを感じ始めました。

一度負の感情が私の脳裏にこびりつくと、
それがまるでフィルターのようになって、
私の見聞きするものすべてに干渉してきます。
今日は、販売員の方々がささやきあう話が
とても好ましくは耳に入ってきません。
むしろ、わずらわしい。
そして不意に、
その囁き声が、私の心の奥深くを
脅かしはじめたのでした。

負のフィルターを通して聴こえるその話声が、
不意に私に向けられているもののように聴こえはじめたのは
同じショップの販売員同士が突然、会話のテンションを小声に変えたときでした。
ひとりは昨日、
私にイジワルな激励の言葉をかけてくれた販売員さんです。
私を良く思っていない反応を示したのかもしれない、として
記憶の片隅にとどめていたその主観的印象が
原因だったのかもしれません。

突然トーンを落として、
ささやきあうように話しはじめた二人のその会話の内容は
明らかに、誰かの悪口でした。
話の文脈を読み取れば、近々会わねばならない何者か、
もしくは苦手なお客様についての話ととれるのですが、
何故かその時私は、自分が噂されているような
被害妄想に陥ったのです。
フィルターは二重になってしまいました。
今日は、耳を傾けるのはやめよう。
遅刻して危うくレジを開店前に準備できないところだったのだから
なおさら誠実にこなしていかねばならない。
そう言い聞かせて、気持ちを外部に向けないことにしました。

その後も、何度かその販売員さんが訪れたのですが、
あるとき、不意に私を見て笑うのでした。
彼女が去ったあと、私は急に
自分の姿が気になって仕方なくなりました。
正確に言うと、
スーツの袖から覗く私のカフス・ボタンが
気になり始めていたのです。

今更言うのもなんですが、
レジうちにしては洒落た格好をしすぎています。
しかしそれは私が個人的に楽しむものであって、
決して行き過ぎたものを身に着けようとは思っていません。
しかし、それが急に気になってしまったのです。
たまたま今日、ワイシャツの関係で着けたカフス・ボタンが
その象徴のように浮き上がってきたのです。

「あの坊や、笑っちゃうよね。
たかがレジうち風情のくせに、何を色気づいちゃってんだか。
最近、調子に乗って私に話しかけてくるのよ。
端から相手にしちゃいないってのに、
自分では小気味いいつもりなのかね。
どれだけ着飾っても、しょせん薄給の契約社員じゃない。
何歳か知らないけど、どうせロクなことしちゃいないでしょ。
誰も相手にはしないっていうのにね……」

私は急に、
私の顔を知る売場のすべての人たちから
嘲笑われている気持ちになってきました。
被害妄想も甚だしいのですが、
問題なのは私が抱いた陳腐な妄想自体にはありませんでした。
そうした言葉や妄想を自分の中でわざわざ作り出し、
それに対して過敏になっている自分の心中に、
惨めさを覚えたのです。
第一、その程度の揶揄を囁かれることなど、
はじめから想像していましたし、割り切ってすらしました。
最初から深く関わることもない人たちですから、
ありていに言えば、気にすることですらありませんでした。
人の目を気にして、コーディネートを楽しめなくなったら
洒落者もおしまいです。

が、意味もなく今日は、客観性を失ったのでした。
はじめが悪ければ、
すべてが悪くなるものでしょうか。

遅番の先輩とレジを回すようになってから、
忙しさもあいまって、そうした想念も消えました。
むしろ今日一日を振り返れば、
ひとりでそつなくこなせたことに関して
自信がついた一日です。
販売員からの質問も数件受けましたが、
適宜に答えることができましたし、
対応にも特に問題はありませんでした。

先の販売員さんの笑みの意味についても、
問題でなくなっていました。
帰りの間際にまた二言ほど交わしたのですが、
いつもの事だと思い直したに過ぎません。
「変な子」
たったこれだけのこと、いつものことです。
しかし、結論は同じです。
その見方を、こうもぐるぐると変えた今日の私は
一体なんだったのでしょうか。

昼過ぎの休憩時間、
私はひとりで黙々と、食事を頬張っていました。
百貨店で働く人たちでごった返す社員食堂でも、
化粧品の販売員は、独自の制服を持つためか、非常に目立ちます。
私は敢えて、視線をそらします。
口に詰め込んでいるのは、
大学の学食のような安い食事。
ソースが舌をさす焼きそば、
そして揚げ物とマカロニとレタスの千切りサラダを詰め込んだもの。
どちらも屋台のそれのようにパッキンづめされた、
味気ないものです。
そして私の胸中で続く問いかけも、
そうした簡素な昼食にふさわしい安さでした。
私が、私に問いかけてきます。
私はただ、レタスを頬張り続けます。

お前は身の置き場のない疎外感が、欲しかっただけなんだろ。
存在しないほどの軽さで、
干渉しないほどの薄さに保たれた存在で、
関わりながらも加われないものの寂しさで、
黙然と眺めていたかっただけだ。
しかしどうだ。
お前はあまりにも主張しすぎている。
拙劣に、卑屈に、そして不器用に。
加われないものの寂しさを、主張しすぎている。
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コメント

こんにゃちは!

コメントをどうぞhttp://roo.to/bloog-ranking/←のサイトに記事が載っていたので、見にきちゃいましニャ(・ω・)ノ

カフス・ボタンと負の想念

わたしもたまに街歩いてて、
「このスカート去年買ったもんだってばれてる!?
 今年っぽくなーい。ぷ。とかって思われちゃってる!?」と
突如通行人の視線が気になることあるよ…

だいじょうぶ!きみはラテンだ!

カフス・ボタンと負の想念

おっけおっけ。もう全部おっけー

カフス・ボタンと負の想念

うにゃ(*´・д・)*´。_。)
案ずることはないである。
「変で悪いか!」の心意気がなくなったら変でなくなってしまう・・・である!

・・・とまぁ、冗談として。

鼻はバナナマロンパイが食べたい気分であります。
何かあったら話してください。
(本日本命企業ボロボロにつき傷心ちぅ)

カフス・ボタンと負の想念

>はぐ・まさとん

回答者の解答がすでにラテンだ・・・・・・w
案外、一日経てばなんも思ってなかったりするのが
私の特徴と言えば特徴です。

ラテン!

>ぬこりんさん
はじめましておいでやす。

って本当にランクされてたらびっくりなんだが、こんな日記が。

カフス・ボタンと負の想念

>ハナ
あらら。さっそく洗礼を受けたのかしら?
ヨチヨチヨチ
お姉さんが慰めてあげるからね
(以上オカマな祐子さんの会話より)

カフス・ボタンと負の想念

いいじゃん
相手が日本語で日本人名だけ、君の感じた寂寥感はそれほどつよいもんじゃないでしょ
俺の知ってる賀沢なら、逆に俺に注目してるな下民どもとか思うはずだが

カフス・ボタンと負の想念

俺に注目してるな愚民ども
って言いそうですね(笑)
最高です お姉さま プククク

カフス・ボタンと負の想念

>Deen

まったくだ。そのとおり。
お前は孤独だ。
そして俺様は孤高だ!!!!
て感じに翌日はなってた。

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Author:賀沢祐介
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