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電車男になるつもりはないのだが

2006–01–20 (Fri) 23:59
本日、3日目の出勤です。

いよいよもって、慣れてきた感じです。
ようやく一通りの販売員さんの顔も覚え、
軽く挨拶程度の会話を交わしたりするようにもなりました。
今日の教官は、今までと違って
天然系の明るいおしゃべりな方でした。
実はこの方と私は入れ替わりで配属されることになったのですが
それが残念におもわれるほど、話しやすい方。
初日のアネゴとその方に囲まれて過ごす今日の日は、
気分的にもずいぶん楽にやらせてもらえました。
しかし、周囲の気遣いによって
思っていたよりもはるかに早く順応してきた感じです。
仕事の面でも一通り、流れが読めてきました。
幾分か緊張が解けてきたのは、それも大きいようでした。

一日をはじめて大過なく終えることができ、
気分よく帰宅の徒につきます。
すっかりお腹が減っていましたので、
「今日は何を食べようか、作るのも面倒だなぁ」
なんて心の中で呟きつつ、満員電車に揺られている時です。
私の隣に立つオヤジの、わずらわしい動きに
そうした幸せな心の独白が破られました。
白髪交じりのはげ頭が印象的な、50代くらいの男です。
くすんだ色のジャンパーから油の匂いがふんだんにします。
厨房で仕事をしているのでしょうか。
まあ、そんなことは正直、どうでもいいのです。
もうすぐ初老を迎える歳にふさわしからぬ幼げな振る舞いが
とにかく目に付いたのでした。
この狭い満員電車の中で、
競馬新聞を片手に広げ、おとなしく読んでいる分には、
まったく邪魔なやつだとおもうだけで済むのです。
が、その男、まるで寝返りでも打つかのように、
頻繁に体を身じろぎさせ、体を右に左に動かしては
新聞の向きと体の向きを無神経に変えるのでした。

せっかく社会人の末端に復帰した私です。
すぐキレたりせず、忍耐を持って接しよう。
腹の中で、今読んでいる新渡戸稲造の『武士道』が思い浮かぶのは
影響されやすい私ならではというべきでしょう。
しかし、おっさんの肩に下げたかばんが
傍若無人に周囲の乗客をなぎ払い、
扉側の女性などを押しつぶすように圧迫するのを目にすると
まるで気付こうとしないその無神経さに、
さすがにイライラがレッドゾーンに近づきました。
それでも何とか「サムライの心」で、
あらぶる気持ちを押さえ込み、深く息を吸い込みます。
意を決した私は、おっさんの肩をとんとんと叩いて
ささやくようにこう伝えました。
「あなたのかばんがそこの女性を圧迫してます。
皆さん満員の中ガマンしているのですから、
せめてかばんをご自分の前にお持ちになっていただけませんか」

すると、おっさん、まさか注意されると思っていなかったか
しどろもどろに言い訳を呟き始めますが、
それでもしぶしぶと荷物を
少し自分の前の方に移動しました。
本来なら、競馬新聞たたんで、
かばんを抱きかかえて欲しいくらいですが
さすがにそこまでは言いませんでした。

そこでしばしの平和が訪れました。
荷物に腰を圧迫されていた女性がちらりと振り返り
私に首を垂れて感謝の意を表します。

いえいえ、あなたのためじゃない、私の精神衛生上のためですよ。
とは言わずに会釈で返し、とりあえずこの一件は収まったのでした。

終わらせてくれれば、の話ですがね。

やがて数瞬の沈黙をおいてから、
おっさん、振り返ると、俺にゴタクを述べ始めました。
「なあ、あんた、なんだ、この電車の中には
ひとりが使っていい幅でも決まってるのか」
お前はいったいの何歳のガキだ!
と、言いたくなるほどくだらない持論を並べ立てるので
やむなく声を抑えてもう一度
「ここは公共の場です。常識の範囲でお考えになれば解ることでしょう」
と切り替えしてみました。

言うだけ無駄だと解っているのに、口にしたことを後悔しました。
まるで火に油を注いだように
その後も延々おっさんが自侭な持論を述べ立てます。
「じゃあおまえ、この周りで俺の場所がどこからどこまでなのか言ってみろよ。決まってるのか?」
いい加減この居直りの悪さに苛立ちが暴発しそうになります。
無駄だと解っていながら、口から抗弁がこぼれ出てしまいます。
「ならば採決を採りますか?あなたがどれだけ幅を利かせていたか、
あなたの周囲にいる人間すべてに、聞いてまわられたいですか?」
そこで、ようやく先ほど会釈をした女性が、
私の危なっかしさを心配してか、弁護に回ってくれました。
「この方はただ、かばんがあたってることを
促してくれただけじゃないですか。
別にそんな非難しているわけではないんですよ」

焼け石に水とはこのことでしょう。
「俺のかばんが悪いのか。んじゃあかばんの置き場だってきまってるってのか」
ますますおっさん、収まりがつきません。
逃げ場をなくして噛み付いてくる小動物のようなその臆病さと
誇りもかけらも見当たらない矮小さに、
私は目の前がくらくらしてきます。
そして私もついに、収まりがきかなくなってきました。
「俺のかばんが上下するのがそんなに悪いのか……
じゃあどうすればいいんだってんだ」
おっさん、よほど寂しい境遇なのか、
ゴタクはますます意味性を持たずに、饒舌を増していきます。

そこで電車は駅に到着、扉が開きます。
しどろもどろで屁理屈にすらなっていないおっさんの声が
私の耳朶に通過することすら、許せなくなってしまいました。
つまり、堪忍袋の尾があっさありと、切れてしまったのです。
ついに私は、前も後ろも気にすることなく
本音を吐き出して一喝してしまったのでした。

「お黙りなさい!見苦しい!!」

「おめえこそ、黙れ」
と素早く切り返したおっさんですが、
勢いは幾分そがれていました。
私はもうこれ以上、
この男と同じ空気を吸っていることすら忌々しくなって
向かいに止まる各駅停車に乗り換えることに。
おっさんと我々のやりとりの被害者を乗せた電車の扉が閉まり
そして私の乗った電車もその後を追うように出発したのでした。
私は終始、電車の先の男を見るのも忌々しげに、
それでも男の姿から視線を離すことができませんでした。

電車に揺られ、イライラを収めながら
徐々に停止しかけた思考が動き出しました。
ひとつ、気付きます。

……弁護してくれた女性を置き去りにして
俺、ただ逃げ出したようなもんじゃないのか?これ。
ただ気まずくして場を悪化させたあげく
勝手にご退場しただけじゃないか、これじゃ……

やがて電車は私の降りる駅に着き、
冷たい風にさらされて、すっかり頭もさめていきます。
またひとつ、気付きます。

……しかしなんで、俺、
『黙れ』じゃなくて
『お黙りなさい』なんだ……?
お黙り?なさい…?

フッ……
高貴な育ちがつい、言葉尻に出てしまった……

ひとり駅の構内にたたずみ、
天を仰ぐ惨めな私の心の独白は続きました。

……まあ、
「黙れよこの3歳児並のド低脳野郎が!!」
というよりはマシだったかな……。
しかし、
怒りに任せてついてでた言葉が
お黙りなさい、とはね……

二度も三度もへこんだ私は、
すっかり惨めな気持ちになりながら、
それでも煮えくり返る腹は
空腹あい混じって収まってくれません。
私はこれから作らねばならない夕飯のことだけを思うことにし、
早足で家路に着いたのでした。

そういえば、あの女性はどうしたのだろう。
その隣の女性も、
おっさんの掲げた腕が邪魔そうで顔をしかめていたなぁ。
ああ、これ、なんか、『電車男』の話に似てるな。

俺、逃げたけどな。


……はあ。なんて惨めな夜だ。
前途多難はまだ続いているようです……。
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コメント

電車男になるつもりはないのだが

なかなかできる事ではないですよ!りきさんカッコいいいです。

女性のほうに、攻撃が移っていなければよいですね・・・

電車男になるつもりはないのだが

ごめん、むかつく話だとはよーく分かってるんだけど、
大笑いしたあげくホレそうになったわ。

お黙りなさい!

みっちーって呼んでもいいですか

電車男になるつもりはないのだが

∵ゞ(≧ε≦o)ぶ
お仕事お疲れの中、電車の中でもお疲れ様でした(笑)
お黙りなさい!最高(*≧m≦*)クククク
3歳児並~は3歳児に失礼ですから、「お黙りなさい」でOKかとw
お黙り・・なさい・・・・・(*;∇;)アハハハハハ【大爆笑】

これからもそのキャラ炸裂で頑張ってください♪(何を?)
とりあえず、お仕事慣れてきてるみたいで安心です^^

電車男になるつもりはないのだが

>通りすがり様
ありがとうございます。
笑いに昇華できれば少しはイライラも収まるかと思いましたが
布団の中でくぐもった声をあげて呻く姿の方が
私には似合っているようです(笑)

>はぐ
やはりみっちーかw
それは俺の大学時代のあだ名デス。
どうぞ呼んでやってーw
笑い転げてもらえたらば、報われたというものよ!

>ハナ
仕事はね、なんか、
雰囲気になれること以外は割りと順調で。
どうもありがとぉ。
しかし、このキャラ、地でとおすと
三輪明宏の後継者になるしかないのは、
私の気のせいでしょうか・・・・・・?

電車男になるつもりはないのだが

毎日波乱万丈で楽しそうだなw
普通に考えればいいことをしたんだが、奇しくも電車男ブーム。
周りから見てもA-Boyが無理しちゃった感があったかも。
まあ、でも自分からいちゃもんつけてきて
「お前こそ、黙れ」
なんて意味のわからない脊髄反射する奴も
頭の悪さに気がついて次の駅あたりで降りたんじゃないか。
君はよくやったよ。たぶん

電車男になるつもりはないのだが

>猟犬
私をA-Boy呼ばわりできるのは、あんたと円城寺くらいだろうな……
ま、なんにせよ、おかげさまで落ち着いたぜ。

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Author:賀沢祐介
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